登録支援機関運営におけて発生しやすい法的リスク
例①:支援計画の不履行
特定技能所属機関は、登録支援機関に、支援計画の全部の委託をすることができます。支援計画作成義務の主体は所属機関ですが、登録支援機関はこれを支援することができます。
支援計画には以下の事項を記載する必要があります。
①事前ガイダンスの提供
②出入国する際の送迎
③適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援
④生活オリエンテーションの実施
⑤日本語学習の機会の提供
⑥相談または苦情への対応
⑦日本人との交流促進に係る支援
⑧当該外国人がその責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援
⑨定期的な面談の実施・行政機関への通報
⑩支援計画の全部の実施を契約により登録支援機関に委託する場合にあっては、当該登録支援機関に係る登録支援機関登録簿に登録された事項及び当該契約の内容
⑪1号特定技能外国人支援の実施を契約により他の者に委託する場合にあっては、当該他の者の氏名又は名称及び住所並びに当該契約の内容
⑫支援責任者及び支援担当者の氏名及び役職名
⑬法務大臣が告示で定める特定の産業上の分野に係るものにあっては、当該産業上の分野を所管する関係行政機関の長が、法務大臣と協議の上、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める事項
登録支援機関が全部委託を受けた場合は、支援計画に記載したこれらの事項を抜かりになく実施する必要がありますが、前記のとおり多岐に渡るので、①~⑨の支援について、全くの不実施とまでいかなくとも、不十分な実施による不履行が発生するおそれがあります。
例②:支援業務に関する届出の不備・未実施
支援業務を行う登録支援機関は、登録事項や支援の実施状況等に関する随時・定期での各種届出が義務付けられています。
随時届出は事由発生日から14日以内に行う必要があります。これには、登録支援機関の登録事項を変更したときの届出、支援業務を休止したとき又は支援業務を廃止したときの届出、支援業務を再開するときの届出があります。
また、定期に支援の実施状況に係る届出をする必要がありますが、定期とは四半期ごとに翌四半期の初日から14日以内を意味します。実施状況に加えて、特定技能外国人の氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地及び在留カードの番号、特定技能所属機関の氏名又は名称及び住所、特定技能外国人から受けた相談の内容及び対応状況(労働基準監督署への通報及び公共職業安定所への相談の状況を含む。)、出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為の発生、特定技能外国人の行方不明者の発生その他の問題の発生状況も届出る必要があり、対応した多数の添付書類が必要となります。
このように、届出期間、届出事項、添付書類等遵守事項は多数に上り、さらにはその前提として出入国管理法令や労働関係法令の知識も必要となりますので、相当の注意を払っていないと不履行が発生してしまうおそれがあります。
例③:不適切な財産管理
特定技能外国人又はその関係者が、特定技能雇用契約に基づく申請人の本邦における活動に関連して、 保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産を管理されないことが上陸許可基準とされています。上陸基準省令では、特段主語を規定していませんので、登録支援機関も外国人又はその関係者の財産管理をすることはできません。
適法な登録支援機関運営を実現するためのポイント
十分なリソースと専門知識の確保
登録支援機関の運営には、物的・人的資源が必要です。遵守すべき項目をこなすことで日々の運営はできるかもしれませんが、それはすべて関係法令に裏付けられた項目であることに留意する必要があります。その意識がなければ、項目の消化がなおざりになってしまい、違反が生じかねません。
出入国在留管理庁公表資料によると、登録支援機関に対する実地調査も年々増加しており、この傾向は続くものと思われます。
そのためにも、弁護士による法的専門知識に裏付けられた運営がとなり、それが特定技能所属機関からの信用に繋がります。
適切な財産管理
特定技能外国人に対する報酬の支払いは、本人の同意の下、当該外国人の指定する銀行その他の金融機関に対する当該外国人の預金口座若しくは貯金口座への振込み又は当該外国人に現実に支払われた額を確認することができる方法によって支払う必要があります。その上で、当該預金口座又は貯金口座への振込み以外の方法によって報酬の支払をした場合には、出入国在留管理庁長官に対しその支払の事実を裏付ける客観的な資料を提出し、出入国在留管理庁長官の確認を受ける必要があります。
当然ですが、その報酬は、特定技能外国人が自由に使用できる訳ですから、事実上これを制約することになるような、登録支援機関が通帳を預かるなどのことはできません。
トラブル発生時に相談できる専門家の確保
特定技能の運営においては、ありとあらゆる場面で届出が必要となります。また、特定技能所属機関と特定技能外国人との契約上の諸問題も発生する可能性があります。
登録支援機関としては、このようなトラブル対応について、いつでも相談できる法律専門家である弁護士を確保しておく必要があります。
当事務所における登録支援機関向け顧問契約の特徴
日常的な支援事業に関するアドバイス
アドバイスはトラブル発生時には限りません。支援業務の効率化・最適化を図るための業務改善が、法令に違反することがないかについても相談することができます。
入管法・技能実習法・労働法に精通
入管法・技能実習法・労働法その他関連する法令に精通した法律専門家である弁護士によるアドバイスで、法令に裏打ちされた対応ができます。
トラブル発生時の迅速な対応
顧問契約による継続的な関係を維持することで、スポット契約ではできない、迅速な対応をすることができます。迅速な対応、これがトラブル発生時リスクを最小化するために重要なことです。
登録支援機関運営に向けては
白﨑識隆法律事務所にご相談ください