技能実習の現場においては、実際に次のような違法状態が発生しています。
企業別サポート
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監理団体向け顧問契約
監理団体運営におけて発生しやすい法的リスク
例①:実施している監理事業への不備
①労働基準法違反の例
- 食料品製造業の事業場において、箱詰め作業中の技能実習生がフォークリフトと接触し負傷した労働災害が発生したため、立入調査を実施したところ、フォークリフトについて、接触防止措置が講じられておらず、また、無資格者が運転していた。
- 機械器具を製造する事業場に対して立入調査を実施したところ、技能実習生も使用するベルトサンダー(金属を研磨するための機械)について身体が巻き込まれるおそれがあるローラーの箇所に覆い等が設けられておらず、天井クレーンについても法定点検が実施されていなかった。また、玉掛用具として使用する繊維ベルトにも著しい損傷が認められた。
(いずれも厚生労働省「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況」より)
これらの違法状態は、監理団体が、実習実施責任者及び技能実習指導員からの報告、技能実習生の4分の1以上との面談、設備の確認・帳簿書類等の閲覧を含む3ヶ月に1回以上の定期監査、1ヶ月に1回以上の訪問指導を正しく行なっていれば、その段階で発見是正できたものです。しかし、実際の事例では、違法状態を認知した労働基準監督署から出入国管理機関・外国人技能実習機構へ通報されます。
いかに、監理事業がもつ意味が、重要かが分かります。
例②:書類・帳簿の監理不足
技能実習実施者は、技能実習生名簿、技能実習生の履歴書、雇用契約書及び雇用条件通知書、賃金台帳、認定計画の履行状況に係る管理簿、技能実習日誌を備え置かなければなりません。
監理団体は、定期監査等で、これらの帳簿の内容と聞き取り内容が整合しているかも精査して、嘘偽りなく適正に作成されているか確認しなければなりません。
また、監理団体としても、実習監理を行う実習実施者の名簿、技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員の履歴書、技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員の就任承諾書及び技能実習に係る誓約書、監理団体と実習実施者の間の実習監理に係る契約の契約書又はこれに代わる書類、実習監理に係る技能実習生の名簿、技能実習生の履歴書、雇用契約書及び雇用条件通知書、監理費管理簿、技能実習に係る雇用関係の成立のあっせんに係る管理簿、監査報告書の写し、入国前講習及び入国後講習の実施状況を記録した書類、訪問指導記録書、技能実習生からの相談対応記録書、外部監査報告書、外部役員確認書を備え置かなければなりません。内容虚偽の監査報告書を作成し、外国人技能実習機構に提出するといった違法行為により業務改善命令を受けたり、監理許可の取消処分がなされたりしています。
例③:実習生の失踪等のトラブル
技能実習生が失踪する原因は様々ですが、実習現場において労働関係法令遵守されていないといったいわゆるブラック状態であることも失踪原因となります。したがって、定期監査等を法令にしたがって行うことは失踪を発生させないことの第一歩ですが、それでも時にして失踪は発生します。
監理団体が、技能実習実施機関から連絡を受けるなどして技能実習生の失踪を認知した場合、直ちに、外国人技能実習機構に、事由が発生してから2週間以内に、技能実習実施困難時届出書を提出する必要があります。警察署への行方不明届の提出も必要です。また、監理団体には、技能実習の終了後に、帰国が円滑になされるように必要な措置を講ずる義務があります。その観点から、外国人技能実習機構への届出と並行して、可能な限り失踪した技能実習生の所在把握に努めることが重要です。
適法な監理団体運営を実現するためのポイント
帳簿等の適切な管理
技能実習実施機関も監理団体も法令により求められる膨大な帳簿等を作成し、備え置かなければなりません。保存期間は、技能実習全体の終了から1年間になります。
監理対象が多くなり帳簿等の作成、整理が後回しになってしまうと、そのまま不備が生じたり、また、内容に問題があるものを作成してしまうきっかけとなってしまいます。
日頃から、監理団体は実習実施機関の監査を丁寧に行い、監理団体自体も外部監査人の監査や弁護士の指導を受け、帳簿等の適切な管理に努める必要があります。
実習生との継続的なコミュニケーション
技能実習生とは採用時から雇用中を含め継続的なコミュニケーションが肝要です。
技能実習生との雇用契約の締結時には技能実習計画は認定されていませんが、来日後に従事することとなる実習内容を事前に把握しておくことが望ましいことから、技能実習生に対し予定される技能実習における業務内容や修得等しようとする技能等の内容を説明することが望まれます。
技能実習生に対し待遇を説明する際には、技能実習生の言語に対応する雇用契約書及び雇用条件書を提示して説明する必要があります。必要に応じて通訳をつけるなどした上で、内容を詳細に説明し技能実習生の理解を得ることが望ましいと考えられます。その際、賃金については、総支給額のみを説明するのではなく、控除される税金・社会保険料や食費・居住費等を徴収する場合にはその金額や目的、内容等について丁寧に説明する必要があります。
技能実習生の指導等に際しては、文化や言語の理解力等の違いなどから指導する側の意図に反し誤って伝わってしまい、極めて深刻な結果となってしまうことがあります。このようなことにならないためにも、日頃から個々の技能実習生の状況に十分配慮して、指導に際しても丁寧な態度でコミュニケーションをとり、信頼関係の構築に努めることが必要です。技能実習生への必要な指導等のつもりであったとしても、暴言や脅迫(例:指示に従わなければ帰国させる旨の発言等)、暴行(例:殴打、足蹴りを行う、工具で叩く等)といった行為は絶対に許されません。
監理団体としては、技能実習実施機関に対し、日頃から、技能実習生とのコミュニケーションにあたっては、相手の国の文化を理解する、わかりやすい言葉を使う、短い文章で話す、「です」「ます」を使って話す、結論から話す、ゆっくり話す、身振り等を使ってツアえるということを意識して接することの重要性もしっかりと説明していく必要があります。
トラブル発生時に相談できる専門家の確保
トラブルが発生した場合に絶対にやってはいけないことは隠蔽です。当然のことですが、実際には隠蔽してしまって、技能実習実施機関も監理団体もそれを理由に行政処分を受ける事例が発生しています。
トラブルが発生した場合にすべきことは、外国人技能実習機構等の関係機関への届出、事案整理、再発防止の策定です。これらの対応を適切に行うには、第三者的視点をもった弁護士等の専門家の指導を受けることが不可欠です。
適切な対応を迅速に行うことで、トラブルをリカバーできることは多々あります。
当事務所における監理団体向け顧問契約の特徴
日常的な監理事業に関するアドバイス
監理事業を行なっていると、イレギュラーな事態が発生したり、技能実習実施機関や技能実習生か問い合せを受け、その対応に追われます。
その対応に迷ったとき、あるいは自信を持てないとき、すぐに相談できる信頼できる専門家がいると、監理団体の職員も不安な状態で業務を進めるのではなく、自信をもって持って業務を進めることができ、業務効率が向上します。
入管法・技能実習法・労働法に精通
監理事業を行うためには入管法や技能実習法及びその関連法令、運用要領、ガイドライン等に従うことが基本になりますが、そもそも現場では労務提供がなされている以上、労働関係法令の遵守も不可欠です。しかも、労働関係法令が遵守されているかどうかは、技能実習生だけでなく、日本人労働者についても同じです。
監理団体において監理事業の実務に対応するだけでなく、これらの法令が遵守されているか、また、自社も法令を遵守できているかを確認していていうためには、入管法・技能実習法・労働法に精通した法律専門家である弁護士の支援が不可欠です。
トラブル発生時の迅速な対応
弁護士は常にトラブルと向き合う業務を行なっています。
トラブルが発生したとき、法令を確認しつつ迅速な対応をしていくことで、リスクを最小限にとどめることができます。
監理団体の適法な運営に向けては
白﨑識隆法律事務所にご相談ください
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