「技術・人文知識・国際業務」の在留資格(以下「技人国ビザ」といいます。)の外国人労働者が、工場等の単純労働に従事しているケースが散見されます。
外国人労働者が技人国ビザでできる仕事は、技術・人文知識を用いた専門業務か、国際業務に限られます。したがって、原則として、工場等での作業といった単純労働に従事することはできません。また、ホテルの飲食部門で接客、ベッドメイキング、清掃といった単純労働のみに従事することはできません。しかし、技人国ビザを有する外国人労働者を中途採用する場合、こうした違法行為が起こり得ます。当然、外国人労働者側で自身が保有するビザと実際の仕事の内容の適合性に注意を払う必要があります。しかし、雇用する事業者も単に外国人が就労ビザを持っているからというだけで、その就労ビザでできる仕事と従事させる仕事が一致していることを確認していなければ、不法就労助長になってしまいます。積極的に調査確認する必要があり、知らなかったでは済まされません。外国人労働者雇用に関するコンプライアンス意識を高めておかなければ、就労ビザがあれば、どんな仕事であっても従事させても構わないと考えてしまい、こうした犯罪行為に手を染めてしまうことになります。
企業別サポート
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不法就労状態の改善対応
企業が起こしやすい“不法就労助長”のパターン
パターン①:在留資格と職種内容の乖離
パターン②:在留カードの更新漏れ
通常、在留資格の更新は期間満了の3ヶ月前からすることができます(期間が3ヶ月以内の場合は、概ね期間の2分の1を経過した時点から可能になります。)。多忙の中、外国人労働者において、在留期間を失念し、事業者でも、外国人労働者の在留期間を管理していなければ、オーバーステイの労働者を就労させたということで、不法就労助長という犯罪行為が発生します。事業者側は外国人労働者が管理していると思い込み、外国人労働者側は事業者側が管理していると思い込み、このような「うっかりオーバーステイ」が発生してしまうことが少なからず発生しています。
外国人労働者を雇用するということは、就労資格に該当する仕事に従事させることで終わりではないのです。
パターン③:資格外活動による就労時間の超過
コンビニエンスストアや飲食店(ファストフード系)において、外国人が接客したり、レジ打ち、品出しをしたりしている姿を目にすることが多くあります。大多数は留学生か家族滞在ビザを有する外国人です。留学ビザや家族滞在ビザでは原則として就労することはできませんが、資格外活動許可を得ることで、1週に28時間、学則で定める長期休暇時は1日8時間、就労することができます。
しかし、これらの業界も、人手不足は深刻です。事業者としてはシフトを埋めるため、また、留学生等においても収入が増えるので、この制限を超えて就労することが発生してしまいます。しかし、これは、事業者にとって不法就労助長というれっきとした犯罪行為になります。こうしたことにならないよう、厳格に就労時間を管理する必要があります。
不法就労状態を放置することのリスク
経営者・企業への影響
オーバーステイの者、不法入国者、資格外活動許可を得ていない者、得ていてもその制限を超えている者、就労ビザを保有していてもその仕事に対応していない者を就労させることは不法就労助長という犯罪行為にあたります。摘発された場合、一罰百戒のために、リークされ大きく報道されることも多々あります。そうなると、金融機関、取引先、一般消費者からの信用は一気に落ち、企業活動に大きな影響が出てしまいます。両罰規定により、罰則は担当者や責任者だけでなく、法人にも及びます。日本人従業員が犯罪行為に巻き込まれ、事業者としても一度落ちた信用を回復するには簡単なことではありません。
現在雇用している外国人材への影響
適切な対応をしていなければ、不法就労をした外国人労働者の在留資格が取り消され、退去強制になってしまうことがあります。しかし、事業者が不法就労助長罪に問われると、適法に就労している他の外国人労働者に影響を与えることがあります。
例えば、技能実習生の受入事業者が、技能実習に限らず出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたときは、実習認定を取り消されることになります。実習認定が取り消されると、技能実習生を受け入れることはできません。すなわち、その時点で雇用している技能実習生との契約を全て解消しなければならなくなります。特定技能においても、欠格事由になりますので、特定技能ビザの労働者との契約を全て解消しなければならなくなります。
人手不足による企業経営への影響
全ての技能実習生や特定技能労働者を解雇せざるを得なくなると企業経営に影響を与えるのは必至です。しかも、その先5年間は技能実習生や特定技能労働者を受け入れることができなくなります。こうなると、この人手不足の社会情勢の中で、外国人労働者に頼っていた事業部門の存続の危機が生じるといっても過言ではありません。
当事務所で行っている不法就労状態の改善対応の詳細
現在の受入れ体制のチェック・確認
既に外国人労働者を雇用している事業者であっても、新たに外国人労働者を雇用する事業者であっても、日本人と同じ対応をしていると法令違反となってしまうことがあります。したがって、自社に、外国人労働者を雇用するにあたって適用される法令に対応できる受け入れ体制が構築されているかチェック・確認をする必要があります。
改善の必要な項目の洗い出し
採用予定の外国人が保有する在留資格と実際に担当してもらう仕事の内容が一致しているか、転職で同種の仕事をする場合であっても在留資格の変更は必要ないか、在留資格の変更は可能か、変更に要する期間はどれくらいか、在留カードが有効かつ真正なものか、これまでに違法行為はないか、採用後(離職時を含む)関係機関への必要な届出は制限日数内に行なっているか、労災発生時(外国人労働者に限定されません。)の届出は確実に行なっているか、採用後は配置転換した場合もその在留資格で就労可能か、在留資格の有効期間はいつまでか、これらの項目は一部に過ぎませんが、確認できているかを洗い出すことが必要です。
改善に向けた施策の実施
事業者においては、外国人労働者の採用時、雇用中、離職時いずれの段階でも、どの部門がどのように対応するか明確にマニュアル化する必要があります。それは、外国人労働者に関するものに限定されるのではなく、日本人労働者を含めて労務関係法令、社会保険関係全般に及びます。事業者と外国人労働者間だけでなく、組織内においても役割を明確にして、それを実施していく必要があります。
不法就労の改善対応については
白﨑識隆法律事務所にご相談ください
事業者が未然に不法就労を発生させないようにするためには、適切な法的アドバイスを受けながらチェック体制を構築し、いつでも相談できる体制を整えておくことが不可欠です。
そうすることが、外国人労働者を安定的かつ長期的に雇用できることにつながります。そのためにも、外国人労務問題に精通した白﨑識隆法律事務所に相談されることをお勧めします。
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